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冬の定番アウター ダウンウェアについて
意外と知られていないダウンウェアの起源とは?
冬を代表する衣類として定着したダウンウェアですが、その起源を辿ると「軽くて暖かい」以上の意味が見えてきます。
ダウンジャケットが誕生したのは今から約90年前。1936年にドイツ系アメリカ人のエディ・バウアー氏が発明しました。
冬の釣りの最中に低体温症で凍え死にかけた瀕死の経験が、ダウンウェア誕生のきっかけとなりました。
当時一般的だったウール素材のアウターと比べて、軽量性と保温性の両方を兼ね備えたのは画期的で、世界初のダウンジャケットの製品タグには「地球上で最も軽く、暖かい」と書かれていたそうです。
その後、エディー・バウアーが製作したダウンジャケットは、エベレストや南極などに出掛ける登山家や冒険家に提供され、また第二次世界大戦中には、軍からの要望により、極寒地用のダウン製品を支給しました。
つまり、ダウンウェアは元々、一人の冒険家の実体験から生まれ、作業服や軍服として、極限環境下での使用を経て、現在では世界中で愛される冬の定番アイテムとなりました。

暖かさのヒミツ:フィルパワー(FP)とは?
そもそも、なぜダウンウェアは暖かいのでしょうか?
暖かさの理由は、羽毛がたっぷりと蓄えた「デッドエア」と言われる「動かない空気の層」が強力な断熱材の役割を果たすためです。
そのため、ダウンジャケットを選ぶ際の指標となるのが「フィルパワー(FP)」になります。これは羽毛の「ふくらむ力」を数値化しています。
- 500FP以下: 低価格帯。やや重めでボリューム感は少なめ。
- 600〜700FP: 一般的な高品質ダウン。普段使い(タウンユース)には十分な暖かさ。
- 800FP以上: 超高品質。非常に軽く、真冬の登山や極寒地にも耐えられます。
ポイント: 「FPが高い=少ない羽毛で暖かい」ということ。そのため、FPが高いほどジャケットを軽く、コンパクトに作ることができます

ダウンは天然素材であるということ
ダウンは人工的には作れずに、主に食用の水鳥の副産物として採取されます。
フランス・ポーランド・ハンガリー・中国などが主な産地で、ハンガリーやポーランドが優良産地と呼ばれますが、鳥の生育環境や個体差、また採取時期などによって大きく左右されるのが現状です。
また天然素材であるため、時間・湿度・油分の影響を受けやすく、経年変化を前提にどう扱うかを考える必要があります。
つまり、ダウンに必要なのは「維持管理」という発想になります。
ダウンは消耗品ではありません。「どう使い、どうメンテナンスするか」を考えることで価値を高まります。ダウンに適切なメンテナンスを続けることで、10年、15年と長持ちし続けます。
そこにこそ、自然素材と向き合うという意味がでてくるのです。

ダウンとフェザーの違いとは?
ダウンウェアの中身には、ガチョウ(グース)やアヒル(ダック)など、水鳥の「ダウン(羽毛)」と「フェザー(羽根)」が使われています。
ダウンウェアを理解するためには欠かせないのがダウンとフェザーの素材の違いです。
- ダウン(羽毛) : 水鳥の胸から生えるタンポポのような綿毛、芯がなくダウンボールと呼ばれ、空気を多く含み、軽く保温性が高い。
- フェザー(羽根) : 水鳥や陸鳥の胸以外から生える羽軸がある羽根のこと、弾力性がありボリュームを保つ。
- 理想の比率: ダウン 90% フェザー 10% が高品質の証といわれています。
ひとつひとつの羽毛は「ダウンボール」と呼ばれ、ダウンボールは毛と毛が絡み合わないという特性があり、空気を溜め込むことができます。
その空気が断熱材となって、体温を外に逃さず身体を温めてくれるので、いかに空気を含める状態を保つかが大切になります。
ダウン製品の品質表示には「ダウン○○%、フェザー○○%」と表記が義務付けられていますが、一羽の水鳥から採れるダウンの量は僅か約5g~10gと言われ、まさに貴重な素材であり、ダウンの比率が高いほど軽く、暖かく、快適になりますが、ダウンだけでジャケットをつくってしまうと、ふっくらとしたボリュームが得られず、押し潰れたような状態になってしまいます。
そのためダウンジャケットには、ダウンとフェザー、どちらもが必要というその一方で繊細さも増します。つまり「高品質=扱いの難しさも増す」ということでもあります。

スタイル別の種類について
| 種類 | 特徴 | おすすめのシーン |
| ライトダウン | 薄くて軽い。インナーとしても使える。耐用年数が短い | 秋口、春先、コートの下 |
| シームレスダウン | 縫い目がなく、風や水の侵入を防ぐ。耐用年数が短い | 風が強い日、都会的な着こなし |
| ヘビーダウン | 厚手で高い保温力。防水性も高いものが多い。耐用年数が長い | 雪国、冬のアウトドア |
人気のブランドカテゴリー(2026年)
カテゴリー別に代表的なブランドを紹介します
ラグジュアリー
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モンクレール (MONCLER): 圧倒的なブランド力と美しいシルエット。
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カナダグース (CANADA GOOSE): 北極でも耐えられるほどの最強の防寒性。
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マッカージュ (MACKAGE): 近年注目度が急上昇している、エレガントなカナダ発ブランド。
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プラダ (PRADA): モダンで洗練されたデザインが特徴、イタリア発ブランド。
アウトドア
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ザ・ノース・フェイス (THE NORTH FACE): 「ヌプシ」や「バルトロ」など、ストリートでも大人気。
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パタゴニア (Patagonia): 環境への配慮と耐久性がピカイチ。
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モンベル (mont-bell): 日本発。高品質ながらコスパが非常に高く、実用性重視の方に。
ジャパン・クォリティ
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水沢ダウン (DESCENTE ALLTERRAIN): 岩手県の工場で作られる、防水・防風に特化したハイテクダウン。
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NANGA (ナンガ): 寝袋メーカー発。滋賀県で作られる、軽くて暖かい国内生産の高品質なダウン。
最近のトレンドについて(動物由来の羽毛を使わない)
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人口ダウン : 天然の羽毛(ダウン)の代わりに、ポリエステルなどの化学繊維を人工的に加工して作られた、軽くて暖かい中綿素材。
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リサイクルダウン: 着なくなったダウンジャケットなどから回収した羽毛を、洗浄・殺菌・再精製して、新品同様の品質に蘇らせた再生素材です。
- Save The Duck: 動物由来の羽毛を使わず、リサイクル素材や植物由来素材を積極的に採用するイタリア発ブランド。
ダウンのお手入れと保管
ダウンウェアの性能を保つには「ロフト(膨らみ)」を潰さないことが重要視されています。
皮脂汚れや湿気で羽毛が固まってしまうと、空気を含まなくなるため、適切なクリーニングや適切な保管が必要です。
日常的に必要なお手入れ方法
以下の3点はシンプルですが、効果が大きい要素になります
- 風を通す時間をつくる : 着用後すぐにクローゼットに戻さず、湿気を残さないことが大切です。
- 襟・袖口のケアを早めに行う : 皮脂汚れは羽毛にも外側にも負担となり、時間がたつほど除去が困難になります。
- 圧縮しない : 羽毛は圧力で空気層を失い、機能が低下する。保管時は必ず「余白」を持たせる。
シーズン終わりのクリーニング
ダウン内部には、目に見えない汗・皮脂・湿気が蓄積しています。
これらは時間の経過とともに、羽毛の絡まり(膨らみの低下)カビや臭い撥水性の低下といった変化を引き起こすため、シーズン終了時のクリーニングが最も重要となり、必ず必要になります。
「汚れていないように見える」ことと「状態が良い」ことは別問題。
ここを区別できるかどうかが、ダウンウェアの寿命に直結していきます。
家庭洗濯とクリーニング店との違い
家庭洗濯とクリーニングの違いを、構造から整理していきます。
「家庭で洗えるダウン」が増えたことで、家庭での洗濯を選ぶ人もいます。しかし、洗濯表示の“可”は「推奨」ではありません。
表示は洗濯できるというだけであり、仕上がりの品質を保証するものではないという点を理解しておく必要があります。
家庭洗濯で起こりやすい問題とは?
家庭洗濯で起こりやすい問題としてあげられるのが乾燥になります。
- 外側が乾いていても内部は湿ったまま
- 羽毛が一度絡まると復元が難しい
- 生地や縫製への負荷は想像以上に大きい
これらは実際に現場で多く寄せられるケースです。
この中でも「内部が乾ききったかどうか」は目視では判断しづらく、生乾きのまま収納するとカビ・臭いの原因になります。
では、プロのクリーニング店は何をしているのか?
クリーニング店の役割を一言で言うなら、「ダウンが無理をしない条件を整える」ことにあります。
たとえば──
- 洗いの工程を、素材と状態に合わせて選択する
- 機械の容量管理を守り、羽毛の動きを妨げない
- 乾燥時に温度と時間を調整し、中まで乾燥しているかを確認する
- 羽毛の偏りを手作業で整える
- 全体の膨らみと風合いをチェックする
プロが行っているのは、「適正条件の選択と管理」と言えます。
※家庭洗濯は「できる・できない」ではなく、「仕上がりの再現性が低い」という点が大きなリスクです
※家庭洗濯との違いを理解し、必要に応じてプロを選ぶことで、ダウンの寿命は大きく伸びます
高級ダウンのお手入れが難しい理由とは?
高級ダウン(モンクレール、カナダグース、タトラスなど)は、素材・縫製・加工が緻密で、構造も複雑です。
- 表地に独自の加工が施されている
- 羽毛の品質が高いほど繊細
- キルト構造の違いで乾燥の難易度が変わる
こうした理由から、通常コースでは想定されていないリスクが増えるため、より慎重な洗浄・乾燥工程を必要とします。
高級ダウンこそ「どのコースを選ぶか」が、その後の寿命を決める大きな要素になります。

